【天使の片翼】



・・くそっ!また空振りか!



らくだにまたがって、シドは、砂漠の真ん中を横断していた。

昨日よりも濃い雲が、空を覆い、太陽が沈む様を隠している。


こんな天気の悪い日に闇討ちすれば、成功する確率はぐんと高くなる。

シドは、苛立ちを隠そうとはせず、渋面のまま天を仰いだ。


モーリタ国の兵士と落ち合う約束が、2日間果たされていない。

こちらの準備が整わなければ、その分カルレインに時間を与えてしまう。


「くそっ!」


誰もいない広い空間に、シドの言葉が吐き捨てられた。

このままでは、自分の計画が水の泡となって消えてしまう。


シドは、焦る自分の心を静めようと、深く息を吸い込んだ。

とたんに、乾いた砂が口の中に張り付いて、むせそうになる。


ファラが、カルレインの実の娘ではない。


それは、聞いたことのない驚愕の話だった。


カルレインが娘を助けにやってくる。


それは、シドが立てた計画の大前提だ。

もしも、ファラの話が本当なら、それは根幹から揺らぐことになる。










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