【天使の片翼】



・・落ち着け。

ファラの話が本当だと決まったわけではない。



何度そう思っても、シドの中の疑念は晴れなかった。

ファラの話は真実なのだろうという思いが、心のどこかにぴたりと張り付いている。


ファラは、嘘をつくような娘ではない。

そしてなにより自分を殺せと言ったファラの態度。

それは、彼女を育てたカルレインへの恩返しに、自分の命を捧げようとしているように、シドには思えた。



・・どうにかして、計画を練り直さなくては。



失敗すれば、ファラとソードを殺さなければならない。

だが、そうしたところで、自分には何の利益もないのだ。

全てをソードのせいに、とルビドは言ったが、それはすなわち、シドを切り捨てると言う意味も含んでいる。

ソードの側近であった自分が、何も知らなかったではすまされないだろう。


この計画がしくじれば、次はない。

復讐は、二度と果たされることはないのだ。


くじけそうになる心に鞭を当て、シドは、見えてきた天幕に視線を移した。





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