【天使の片翼】
あまりにきっぱりと述べるので、ソードはカルレインがソランに何かを話したのかと考えて、
慌ててそんなはずがないと思いなおした。
今の今まで意識のなかったソランに、カルレインが相談を持ちかけるわけがない。
「疾風の黒鷲が命を狙われて、このままにしておくはずがないだろう。
そもそも王妃や王女が殺されかけて、それをそのまま放置したのがおかしかったんだ」
全てをシドのせいにして、ルビドとカルレインは裏で何かを取引したようだった。
それがまさか、自分の命を助けるための身柄の引渡しだったとは、ソランには想像もできなかった。
そして、冷静に考えれば、カルレインがホウト国をそのままにしておくわけがないと思った。
彼はおそらく待っていたのだ。
ルビドがじれて直接自分の命を狙いに来る事を。
あるいは、先だって自分をカナンに遊学させたのも、何かの仕掛けだったのかもしれない。
だが、ソランはまたも否定を繰り返した。
「カルレイン様はそういう人ではありません。
確かに怒らせると怖いですけど、私情で民を困らせたりはしませんよ。
もしも何かをやるとしたら、それはルビド王個人に対してでしょうね」