焦れ恋オフィス
それからすぐに名前が呼ばれて、私は診察室に入った。

まず内診を受けて、赤ちゃんの心音を聞いてホッとした。

ちゃんと生きてるね。

そして、私の担当の女医さんの木原先生の話を聞いた。

30歳だという木原先生は、ショートカットが似合う長身の美人さん。

パッと見ると冷たそうで、私の妊娠にもどういう反応があるか不安だったけれど、

『元気な赤ちゃんが産まれるように頑張りましょう』

と穏やかに笑ってくれた。

そして今、目の前にいる木原先生は、私の検査結果を前にして少し考えこんでいる。

私の背後で一緒に話を聞こうと待っている真里さんも少し不安気。

「赤ちゃんは元気に育ってますね。はい、持って帰っていいですよ」

手渡された超音波写真には、まだ赤ちゃんらしき影が小さく写ってるだけでまだその姿は曖昧にしか見えないけれど。

「……こんにちは」

写真を手にした瞬間、思わずそう言っていた。
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