焦れ恋オフィス
私の涙を、夏基の指が拭ってくれていると

「…そろそろいい?」

え?

「俺もいるんだけど」

夏基の向こうに頭をそっと傾けると、ドアにもたれて腕を組んでいる央雅。
見るからに呆れた顔をしている…。

「…気付かなかった…」

慌てて夏基から離れようとしたけれど、私の左手は夏基に握られたまま。
見ると、切ない顔で私をじっと見つめる瞳。

「…ごめん。やっと会えたから」

ははっと笑って、そっと離された私の手…。
何だか寂しくて、無意識に私が夏基の腕をつかんでしまう。
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