焦れ恋オフィス
囁くように…

「夏基…?」

と問うその唇を俺の唇で塞ぐと、ためらいがちに応える俺だけの恋人。

俺の首に回された左手をつかみ、ゆっくりと二人の間に降ろした。

「芽依…」

「なに?」

唇が離れても、すり寄ってくる芽依…。

スーツのポケットからベルベットのケースを取り出して、芽依の目の前で開けると。

息をのみ、目を見開いてじっと見つめる。

ケースの中の輝きに目を細めると、涙ぐむ瞳が俺を射る。

…この瞬間。

これ以上魅かれる事は無理だと思っていた自分の気持ちが嘘だとわかる。

どこまで俺は、芽依に堕ちていくんだろう。
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