焦れ恋オフィス
私が夏基との赤ちゃんを妊娠している事を黙っていようと決めたのは、私への単なる好意を、妊娠という手段で愛情に似せた関係に持っていくことに抵抗を感じたから。
そう言うと、どこか正論を語っているようだけれど、実際の私は怖いだけだ。
妊娠を逆手にとって夏基からの愛情を得ようとしても、実際に得られるなんて思えない。
その事実に直面して、今以上に寂しい関係へと変わっていったらどうしようと怖くてたまらないから。
だから妊娠の事は決して伝えないと決めて、これからの事を考えていた。
けれど、病院で診察を受けて妊娠が確定し、赤ちゃんの元気な心音を聞く度に気持ちは揺らぎ、エコーで赤ちゃんの影を見れば。
私の中の何かが変わっていく。
夏基には、伝えないという決心。
そうする事が正しいと思っている自分が、とても身勝手な気がして、辛くなった。
そう思えば、とにかく夏基に会いたくて。
「戻ってきたよ」
再び訪ねてきた私に驚いている夏基。
ちゃんと話せるかな。
赤ちゃん、お母さんに勇気をちょうだい。