焦れ恋オフィス
「芽依……俺は……」
「ねぇ、今晩また会社の女の子達と飲み会って言ってたよね」
何か言いかけた夏基の言葉を遮って、その場の雰囲気を変えるように聞くと。
言葉を封じられて、一瞬悲しそうに目を細めた夏基。
「……あぁ。現場で仲良くなった開発部が主催の飲み会に呼ばれてる」
「そうなんだ。開発部の女の子達ってかわいい子多いから、楽しみだね」
「……」
「こないだ私がプレゼントしたグレーのシャツ着てったら?夏基にすごく似合ってたよ」
「おい、芽依……」
「……じゃ、私は帰るね。私も今日はこれから約束があるんだ……」
そう言って、何てことないように肩を竦めた。
本当の気持ちが顔に出ていないか気になって、思わず俯いたけれど。
そんな私の様子を身動き一つせずに視線を送っていた夏基は、低い声で呟いた。
「高橋専務?」
瞬間、心臓が痛んだ。
けれど、それすら顔には出さないように口元を引き締めて顔を上げた。
「え?違うよ。花凛と出産準備の買い物に行くの」
必要以上に穏やかに囁くと、夏基は微かな吐息と共に。
「なぁ、それが終わったらここに戻ってこいよ。俺も飲み会早めに切り上げるから」