言霊師
それでも平静を装い、歩くスピードは落とさなかった。

―――あの方の香に似てる…

と思いながら、風を吸い込む。

結局、約束より20分以上遅れて時計台に着いた。


動悸は、何故かまだ止まらない。


自分の鼓動をBGMに、ヒョウリの姿を探していると、ある男性の後姿が目に入った途端、動きが止まった。

大きく跳ねた心臓は、そのまま落ち着く素振りを見せない。



まさか……?

でも、こんな所にいるはずがない。


だけど―――



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