言霊師
「何で、貴方が…?」
再度問うと、髪を撫でられる。…風で絡まっているのを、もっとしっかり直せば良かったと後悔した。
二人の周りには、答えを求めて、ムメの言霊がフワフワと漂っている。普段はすぐに消してしまうのだが、そんな事に気を配る余裕がなかった。
「私が相手では、不満か?」
「い…ッいえ!」
「では、何処へ行こうか。
大学を案内してくれるのか?それとも、街へ?」
赤くなりながらも、ムメは花のように笑顔を咲かせ、
「…貴方とご一緒できるなら、何処へでも―――」
そう言った。
それが、
最初で最後の二人のデートだった。