言霊師
「―――まさか…ッ!」



見開いたその目には、怒りの色だけが映っていた。



…バァーーーン!!!



「…許すまじ……」


部屋の戸を、付けられた見張りごと吹き飛ばした爆発音が敷地内に轟く。怒りに震える彼を止められる者は、此所には居ない。
それが出来るのは、彼が愛するかの人だけだから。


怒りに身を染める事は、自我を失う事と紙一重。それは十分に理解している。

だが、このまま誰かを殺めても、汚れた身と墜ちようとも

ただ貴女の為に。


ただ……

認められないとは知りながらも、愛してしまった人を護る為に。


どす黒い感情が身体を支配していくのを感じながら、一言主は静かにその闇に身を委ねた。



「……今更、だな」



既に己が身は、怨霊と大差ないモノへと墜ちているのかもしれない。
怨念に等しい程の執念をこの身に宿すようになったのは、いつからだっただろうか。
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