言霊師
全ては、あの時―――自分を敬い、護ってくれていた一族が根絶やしになるのを救った、あの時に始まった。

ムメの一族はその先を伝えてはいないが、黄泉帰りを果たした後、あの場で何があったのか。

その時の事を思い出すと、憎しみと哀しみに負けて自我が消え失せてしまいそうになる。だから考えないようにしていたのだが、黒い感情が満ちた今、何か記憶に違和感を感じる。



あの時、本当は何があったのだ―――?




「…自らの怨みに、とうとうその身を明け渡したか?一言主よ。」


「き・さま…よくも…ッよくも我を……!!!」


禍々しい、怨みが込もった言霊を軽く払いながら近寄って来たのは、慎であった。
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