言霊師
「―――!!!」


最後まで言い終えぬうちに、神が声にならない何事かを叫ぶ。そしてすぐに、突風がムメの言葉を遮った。息の仕方さえ忘れる強い風に、目も開けていられない。

両手で顔を覆い足を踏ん張るムメは、必死に開けたその視界に一言主の姿を僅かに捉え、息を飲んだ。

もはや、彼はムメの知る彼ではなかった。

伸びた牙に、爪。
風に乱れる髪。

それは彼女が知る限りでは、怨霊の姿。


「一言、主…様ッ!?」


戸惑うムメは次の瞬間、不思議なもの、いや光景を見た。


「―――え…?」


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