言霊師
ふいに、静かになった風。
空気が変わったように感じたのは、多分間違いではない。
さっきまではいなかった。だが今、確かに、自分と一言主の間に立ち、神に刀を突き付けているのは―――
「…一言主。何してるんですか?」
「ヒョウリ…ッ!?」
それは、ムメが無事を祈った者だった。彼は、神の荒れ狂った姿にも動じずに、ただ静かに言葉を紡ぐ。
「結界内の様子がおかしかったんで、“本物”に何かあったのかと来てみたら…
間に合って良かった。」
ニコリと笑うヒョウリは、一言主が“こう”なっていたのを知っていたかのような余裕を見せた。そして、何故か動こうとしない神に向かって告げる。
「一緒に、慎の所に行きましょう。覚えているはずですよ。貴方と僕が初めて会った場所ですから。…ね?一言主の神。」
神がヒョウリを傷つけずに大人しくしているのを見ていたムメは、呆然とした顔で、あぁ、と声を漏らした。
それは、神の姿が徐々に本来の姿に戻っていったから。
「…慎の鎖は、僕にしか切れない。」
ポツリと呟く声に、ムメはその場に崩れる神からヒョウリへ視線を移した。
空気が変わったように感じたのは、多分間違いではない。
さっきまではいなかった。だが今、確かに、自分と一言主の間に立ち、神に刀を突き付けているのは―――
「…一言主。何してるんですか?」
「ヒョウリ…ッ!?」
それは、ムメが無事を祈った者だった。彼は、神の荒れ狂った姿にも動じずに、ただ静かに言葉を紡ぐ。
「結界内の様子がおかしかったんで、“本物”に何かあったのかと来てみたら…
間に合って良かった。」
ニコリと笑うヒョウリは、一言主が“こう”なっていたのを知っていたかのような余裕を見せた。そして、何故か動こうとしない神に向かって告げる。
「一緒に、慎の所に行きましょう。覚えているはずですよ。貴方と僕が初めて会った場所ですから。…ね?一言主の神。」
神がヒョウリを傷つけずに大人しくしているのを見ていたムメは、呆然とした顔で、あぁ、と声を漏らした。
それは、神の姿が徐々に本来の姿に戻っていったから。
「…慎の鎖は、僕にしか切れない。」
ポツリと呟く声に、ムメはその場に崩れる神からヒョウリへ視線を移した。