言霊師
――――――
一言主が目を醒まして始めに見たのは、命の灯が消えかかっているムメを子供のように泣きながらも必死で助けようとしているヒョウリの姿だった。
「動け!動け!戻れ!止まれ!…くそ…ッ何で…!動け!!」
思い付くまま言霊を紡いでも、それらが彼女を元に戻す事は不可能だ。そこまでの力は、言霊に宿ってはいない。
それを知っているはずなのに、二人の周りに佇む言霊の数から、彼が祈るような思いで言霊を紡ぎ続けていたのが分かる。
神が、自分が囚われている間にこの場で何があったのかを知るには、十分な程に。
「ヒョウリ、……ヒョウリ」
一言主が声をかけると、ヒョウリは力のない目をそちらを向ける。横たわるムメの姿は、昔の自分が犯した過ち―――彼女の一族を黄泉帰らせた時の事を思い出させた。
そして、初めてヒョウリに出会った日の事も。
「一言主…」
「初めて会った時も、そうやって泣いていたな。
あの日、横たわっていたのはお前の母親だった。」
一言主が目を醒まして始めに見たのは、命の灯が消えかかっているムメを子供のように泣きながらも必死で助けようとしているヒョウリの姿だった。
「動け!動け!戻れ!止まれ!…くそ…ッ何で…!動け!!」
思い付くまま言霊を紡いでも、それらが彼女を元に戻す事は不可能だ。そこまでの力は、言霊に宿ってはいない。
それを知っているはずなのに、二人の周りに佇む言霊の数から、彼が祈るような思いで言霊を紡ぎ続けていたのが分かる。
神が、自分が囚われている間にこの場で何があったのかを知るには、十分な程に。
「ヒョウリ、……ヒョウリ」
一言主が声をかけると、ヒョウリは力のない目をそちらを向ける。横たわるムメの姿は、昔の自分が犯した過ち―――彼女の一族を黄泉帰らせた時の事を思い出させた。
そして、初めてヒョウリに出会った日の事も。
「一言主…」
「初めて会った時も、そうやって泣いていたな。
あの日、横たわっていたのはお前の母親だった。」