言霊師
――――――

背中に鈍い衝撃が走ったと思った時にはもう、身体が、動かなくなったのだ。自然と口から零れたのは、間抜けな「―――え?」という一言。

ふらりと地面に吸い寄せられるのに抗えずに倒れると、自分の腹部から刀の切っ先が見えて…

あぁ、やられたんだ。

と、ただそう思った。


自然と閉じた瞼の裏には何も映っていない。痛みはほとんど分からない。死も思ったよりいい加減なものだ、なんて誰か言っていた気がするけど、その通りかもしれないわ。

そうやって私が現から旅立ちかけた時、ヒョウリが叫ぶのが聞こえた。


それから…それから、泣きながら私を引きとめる声も。


―――泣かないで。私が弱かったの。貴方が悪いんじゃない。だから、そんなに痛々しい声で泣かないでよ。
…安心して逝けないじゃない。バカ。


―――ねぇ、ヒョウリ…もう…お願いだから―――
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