言霊師
言葉にしてしまえば、それに縛られる。

その事を痛いほど分かっているからこそ、一言主もムメも互いに何も言わないし、気持ちを確かめるような事もしない。

……出来ない。


―――彼は、自分が護り、崇めるはずの存在。


―――彼女は、自分の為に酷な役を負っている存在。


それ以上でも、それ以下でもない。


たとえ、互いの間に特別な気持ちがあったとしても、


その関係だけは不変だから。


…決して、変えられないのだから。
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