カレカノ
「朱希…」
「あぁ!そこの大学生のお兄さん?」
進めていた足を止め振り向く。
「これからは柚葉に絶対に近付かないでね?今度はこんなんじゃ済まないよ?」
それだけ伝えると前を向いたまま、また歩き出した。
愛子なんかに目もくれず柚葉の手をしっかり握り締めたまま。
…―後日
愛子から聞いた話に慶太は驚いた。
あんな憎まれ口を叩き篠山さんを褒めようとも女としても見ていない朱希が。
確か、その日は合コンで知り合った朱希が必死で口説き落とした子とデートと張り切っていたはずなのに…
それとなく朱希に聞いてみるとバツの悪そうな顔をして言った。
「寝坊して約束の時間に間に合わなかったから止めた」
その子よりも篠山さんが大事だと素直に言わない朱希に慶太は「そっか」と一言だけ返し何も言わなかった。