いなくなる
雅樹の面影を思いつつ、誰もいない教室を覗き込んでいる美奈の視線に見慣れない何かが見えた?


「・・・あれ・・・?」


教室の扉の窓ガラスを、身を乗り出すように覗き込む美奈。


「・・・なんだろう?」 


その気になるものがなんなのか、美奈は確認しようと教室の前の扉に行き再度覗き込んでみた。


そして鞄からノートと鉛筆を取り出し、その気になるものを書き写していく。


「美奈!お待たせ」


顧問との話しを終えた利沙が、3年D組の教室を食い入るように覗き込む美奈に言う。


「・・・あっ、うん・・・」


生半可な返事はするが、こちらを振り向かない美奈。


「・・・ちょっとD組の教室なんか覗いて何やってんのよ?」


問いかけているのに、今度は返事もしない美奈に少しムッとする利沙。


「ほら、もう帰るよ!」


しかし美奈は、しきりにD組の教室を覗きこんで何やらノートに書き込んでいる?


美奈の態度に、ムッとした利沙は少し強い口調で言った。


「あっそう!・・・解った、もう置いてくからね!」    


利沙の、置いてくとの言葉に敏感に反応した美奈は、慌ててノートを鞄にしまい利沙に駆け寄り屈託の無い笑顔で言う。


「さぁ利沙、何やってんの早く帰ろうよ!」




美奈を冷めた目で見つめ、あきれながら利沙が言った。




「・・・美奈、あんたって子は・・・」 
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