私の秘密の旦那様
しばらく車を走らせると、お見合い会場に着いた。

「さぁ、着いたぞ。
…やはり少しばかり早かったかな?」

今回は、ホテルとかではなく古い和風の旅館。

日本庭園がすごく綺麗でツツジの花が鮮やかに咲き、鹿威しに水が溜まり一端から流れだし、“こおん”不鮮明だが優雅な音を響かせ、気持ちを和ませてくれる。


池には鯉もいるようだ。



まだ…時間もあるみたいだし、せっかくだから少し散歩でもしよう。
それから、気持ちを落ち着かせて冷静になろう…。


「…じゃあ私はこの辺り散策して来るね。」


「少ししたら戻って来くるのよ?

あと渚だから、大丈夫だと思うんだけど…逃げ出したら、だめだからね?」


お母様は心配そうにしてたがお父様の『そんな心配しなくても渚なら大丈夫だよ。』と言った一言を聞いて『そうよね。』と頷いていた。


「…絶対、逃げないでね?
お見合いを断る、断らない関係なく。」

“逃げないで”ってこれで2回目…。
そんなに私って信用ないのかな?

「はぁい…。逃げません。」



しきたり…ねぇ。
でも、なかなかいないよなぁ。高校生の娘にお見合い10回もさせる親なんて。

…さっきも同じ様なことを考えてたよなぁ。

私ってどうして何度も同じ事考えるわけ!?

いや、…それしか、今は考えられないんだ。



あれ?…うわぁ、綺麗な人。横顔しか見えてないけど。

ふと視線を向けた所に、男の人が立っていた。

なんか…先生に似てる。
先生も着物着たら似合うだろうな…。

私、さっきまで先生を諦めないとか言ってたけれど…………なんか、

ドキドキしてきて運命感じちゃう…かも。


でも…、あれ?あの人…もしかして……

横峰先生?


やっぱり先生だ!

着物着た横峰先生もカッコいいなぁ…先生もここだったんだ。お見合い会場。


先生とお見合いする……人いいなぁ。

先生みたいな素敵な人をフる人なんていないよ。


あぁ~…もう、終わったな。
さよなら、私の初恋…。

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