私の秘密の旦那様
それから着物を来たあと仕度をするために自分の部屋へ移動した。

トントン

しばらくして、部屋のドアをノックする音が、聞こえた。

「はい…。」


ガラッ

ドアの向こうからはお父様が着物を着て立っていた。


「渚、お父さんだけど。出かける準備はもう済んだか?って…済んだみたいだな。

…ますます、昔のお母さんの若い頃にそっくりだな。
可愛い、可愛い(笑)」

お父様は懐かしそうな顔で私を見つめてきた。
私…そんなにお母様に似てるかな?

…ま、確かに妹よりはお母様似であると思う。




「そう…?」

私は少し遅れて返事をした。


「あぁ、とても綺麗だ。お父さんがお母さんと、出会った時にソックリだ。

じゃあ少し早いが行くとしよう。」


そう言い、お父様は優しく微笑みを向けてきた。

「………はい。」



イヤダ…イヤだ…いやだ…嫌だぁ!

行きたく……ないよ、お見合いなんか。

急に不安が大きくなってきちゃった。

先生………!


「渚、今日の人は渚がまだ小さかった時にとても可愛がってくれた人の息子さんなのよ。」

「…そうなの?」

知らなかった…。でも、なんか…嫌な予感。
だんだんお父様の顔が真剣になってきたから。


「…だから、な。今回は断るなよ?

って言いたいんだが、こればかりは本人の意思だから強制は出来ない。

だが、できれば今回が最後の見合いにしたいと思っているんだ。」

複雑そうな表情を浮かべるお父様とお母様。

「…………。」

私は、なにも答えることができなかった。

だって、それとこれは別だろ~…。

結婚っていったら人生最大の選択じゃない?

ていうか、
普通、学生の…まだ高校生の大事な娘にお見合いさせる?

いくら家のしきたりでも…結婚相手は一生一緒にいるものなんだよ?

お見合いなんかって言ったら悪いけど……お見合いなんかで人生を共にする人を選ぶのは…難しい。

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