旦那様は社長

手紙を読んで、初めて男泣きをしてしまった。


こんな姿、光姫に見られなくてよかった。


ここまで思いつめていたことに全く気付いてやれず、今朝だって些細なことをいつまでも根に持って、光姫に辛く当たってしまったことを、今更になって後悔してしまう。


もしも大河がオレの子でも、オレは光姫と別れる気なんてない。


有栖川が欲しいなら、大河と友里にくれてやる。


父親として最低だと言われたって、世間からどんなに非難を受けたって、光姫さえいてくれればそれでいい。


今のオレは、有栖川の後継者でも社長でもなく、たった一人の女しか見えないただの男。


光姫と一緒に一日を終え、新しい明日を迎える。


そんな当たり前の日々を送ることが、今のオレの最大の願い。


「こんなもの!!」


同封されていた離婚届は破り捨てた。


「誰が別れてやるか!!」


涙の筋をシャツの袖でゴシゴシと拭き、急いで携帯を取り出す。


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