†Orion†〜Nao's Story〜


「お父さんから聞いてない? ……って言うはずないか。家では仕事の話はしないって言ってたから」


「…………」


「長谷川、仕事もできるヤツだったからさ。料理長も“うちの店にほしい”って言ってたんだよ」


「でも……、それって噂ですよね?」



先輩を信じたくて。

先輩のちゃんとした彼女なんだっていう自信が欲しくて。

あたしは確かめるようにして訊く。



「まぁ……、長谷川がいた店の子から聞いた話だからな。でも、そういうことが何度もあったって言っていたし……」


「何度も?」


「うん。長谷川の彼女がバイト先に乗り込んできたとか……。人伝いにしか聞いてないけどさ、“火のないところに煙は立たぬ”って言うじゃん」



< 94 / 220 >

この作品をシェア

pagetop