ぬくもり


しまった…、家の前だってこと忘れてた…、



お母さんが開いた扉から顔を覗かせた。




「…やっぱり、声がすると思った。お帰りなさい、奈央ちゃん。」




「た、ただいま。」




笑顔でおかえりを言ってくれた母の視線がハジメくんに向けられる。



ハジメくんはもう硬直状態だし…




「……お知り合い?」




「あー…、うん!そう!友達の知り合いで時々勉強教えてもらったりしてるんだ。」




とっさに考えた嘘。




「あら、そうなの!…お世話になってます。」




ちゃんと扉の前に出てきて丁寧にハジメくんに礼をする母に、




「あ、いえ…。」




ハジメくんは動揺しながらもそう返した。




「立ち話なんてしないで入ってもらったら?…お話するんでしょ?」




「あ、うん。…えーと、……どうぞ。」




「あ、どうも。」




…こうして、谷村家へハジメくんを招き入れることになった。





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