月から堕ちたアリス
「さぁみんな、ティーカップを掲げて。」



みんな、といってもこの兄弟とあたしだけなのだが。

2人が掲げるので、とりあえずあたしもそれに合わせる。



「それでは…“お誕生日じゃない日”、おめでとう!!」

「おめでとー!!!!」



…は??

今何て??


“お誕生日じゃない日”??!!



全然めでたくも何でもないじゃんかっ!!!!



『誰かのお誕生日って訳じゃないの??』

「何を言ってるんだい??“お誕生日じゃない日”だからこそ祝うんじゃないか。」

「そうだよ!!じゃなきゃ毎日パーティーじゃなくなっちゃうじゃん。明日も明後日もパーティーだ!!」



いやいや…

お誕生日だからこそ祝うんでしょ。


ってゆーかそんな毎日祝ってたら祝う喜びが全く感じられないし。


まぁいーや。


何か言ったところで何も通じない気がする。



『ところで、あなた達は??』

「ああ、自己紹介がまだだったようだね。僕達は『いかれ帽子屋』さ。」



自分で“いかれ”って言っちゃってるよこの人!!


でも、…確かにいかれてるみたいだ。



「そういうお嬢さんは何者なんだい??」

『あたしは優。』

「君はアリスではないのかい??」

『え…何で??』

「そろそろアリスが来るような気がしていたのさ。それに君は月から堕ちてきた。だから――」

『…月から堕ちてきた…??だから…??』

「さぁ。もっと紅茶を飲もうよ、アリス!!今日は折角のお茶会なんだから。」



肝心な部分で少年に遮られてしまった。

しかも毎日やってるくせに何が“折角”だ!!!!

ってかアリスで定着しちゃってるし…





あの兎男といいこのいかれた兄弟といい、どうしてそこまで“アリス”にこだわっているんだろう??


――謎だ。
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