月から堕ちたアリス
家族―――





優秀な兄。

出張でろくに帰ってこない父。

兄とあたしを比べ、あたしばかりを怒る母。



確かにとても嫌だったその環境。



“ちょっと優っ?!待ちなさい!!優!!!!”



でも、あたしのことを見放さないからこそお母さんは怒っていた…??










友達―――





特に相談をしたりする訳でも無く、

ただみんなでつるんで騒いで遊んだ仲間。



親友なんて、いなかった。



“じゃあみんなに言っとくから帰ってちゃんと寝るんだよ??”



でも、みんなで盛り上がってる輪を外れて、1人で考え込んでいたあたしに話し掛けて体を心配してくれたのは、


…瑞希だったよね…??










彼氏―――





あたしの大好きな、取っ替え引っ替えで彼女を作っていた…歩。

みんなに内緒ということを条件に付き合っていたあたし達。



歩にとって、あたしはただの都合の良い女…??



“またね、優ちゃん。”

“優っ!!”



すぐに彼女を変えるはずの歩なのに、あたしだけはまだ捨てられていなかった。



それって、自信持っても良いんだよね…??

























今思えば、あのときあんなに嫌だったのはあたしがみんなとちゃんと向き合ってなかったせいなのかな。



例えあれが架空に作られた人生だったとしても…



あたしが有村 優として過ごした記憶はあたしの中に確かにあるし、これからも残るだろう。




















『あたしの日常……













終わっちゃった――…。』



微笑と共に、頬には一筋の涙が伝う。
















そして―――



その瞬間、あっちの世界の『有村 優』という存在は、誰にも気付かれること無く…消えた。
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