君のとなり―昼休みの屋上で―
『裕が、私から・・・この屋上から、消えちゃうような気がして・・・裕がキスしてるところ、見てられなかったんだ・・・』

そこで一端言葉を止めた私は、自分が何を言っているのかようやく理解した。




私は・・・なんて事を言っているんだろう。




今、私は裕を縛りつけようとしているも同然だ。


裕と私は付き合っているわけではない。
それに、私達は縛らず縛られずの関係で成り立ってきた。

なのに今、私はこの関係を壊そうとしている・・・。




『ゆ、裕・・・ごめん。
今の忘れて・・・?私も、忘れるから・・・。』



こめかみを濡らす滴を乱暴に拭ってそう言いながら、私は立ち上がり屋上を出て行こうとする。





けど扉の取っ手に手をかけた瞬間、






グイッと後ろに引っ張られた。





「・・・俺、何も言ってないんだけど。」

裕は後ろから私を抱き締めながら、クスリと笑って呟く。


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