君のとなり―昼休みの屋上で―
呟くように、私は話し始めた。
すごく小さな声だったけど、それでもいいと思えた。




裕は、ちゃんと私の声を汲み取ってくれると信じられたから。



『今日ね、見ちゃったんだ。





・・・・・裕が誰かとキスしてるところ。』


一瞬。

ほんの一瞬、私の頭を撫でていた裕の手がピタリと止まった。
だけど、再び動き始める。





『嫉妬じゃないと思うんだ。私だって自分が嫉妬してるかどうかの判別くらいつくしね。

でも・・・・・でもね?なんか怖かった・・・。
裕が・・・私の知ってる裕じゃなくて・・・「現実の世界」で見る裕が、全然知らない人みたいで、すごい、すごい怖かったんだ。』

そう言って、また涙を流す私。



そして、私の話に耳を傾けながら、ただただ私の頭を撫でる裕。


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