准教授 高野先生の恋人
彼は、私を抱きしめる力をちょっと緩め、そして、静かに話し始めた。
「ドラマなんかで、ときどきあるよね、そういう場面。
心が打ちのめされて、ずたずた、ぼろぼろになったとき、
“助けて”とか“助けてあげる”なんて、救いを求めて一夜を共にする、みたいな。
助けるって、いったい何なんだろうね?
僕はね、そこにあるのは“救い”じゃなくて“逃避”じゃないかって思うんだよ。
弱さとか、辛さとか、見たくないものや向き合いたくないもの、現実からの逃避。
まあ、セックスは特別な行為だから、現実逃避にはお誂え向きなのかもしれないけど。
“逃避”じゃなければ“避難”という言い方でもいいよ。
だからね、仮に“救われた”と感じても、それは一時の錯覚なんだよ。
身体的な充足感を、精神的な何かに都合よく置き換えているだけなんだよ」