准教授 高野先生の恋人

私はやや恐縮しながら森岡先生が入れてくれたほうじ茶に口をつけた。

「鈴木さんもまったく人が悪いよなぁ」

「へ?」

なんのことかまったくわからなかった。

「オレ、マジでかなーり驚いたよ」

「は?」

顔を上げて森岡先生を見ると、先生の視線が“そっちそっち”とカスガイを差す。

カスガイが?なに??どうしたの???

「アタシ、先週から竹井になったから」

「はぁ?」

この人、今いったいなんと???

「だから、名字が変わったって話。まっ、“春日”が“竹”になっただけだけどね」

ほうほうほう、春日井と竹井で“井”の字はそのまま変わらない……ってなぬー!!

「あのさ、カスガイそれって……」

「うむ。結婚してみたアルよ」

「ええーっ!!!」

芸能人の婚約会見みたいにサッと左手の甲を見せたその指には、

ぬわぁあんと!まばゆいばかりに輝くダイヤモンドの指輪が光っていた。
< 208 / 324 >

この作品をシェア

pagetop