准教授 高野先生の恋人
寛行さん、さっきから私とまったく目を合わせようとしないし。なんか、へん……。
けれども、桜庭さんの目に映る寛行さんは、いつもの“高野サン”のようだった。
「そうだ!高野サン、この展覧会の招待券よかったら要りませんか?」
そう言って桜庭さんは壁に貼られた展覧会のポスターを見遣った。
この展覧会――
私が寛行さんと一緒に行くのを楽しみにしている展覧会。
さっき……私が桜庭さんから一緒に行こうと誘われた展覧会。
もちろん、桜庭さんからのお誘いは丁重にお断りするつもりだった。
なのに――
「ボク、母の仕事関係のつてで何枚か招待券を持っていて。
そうそう、ちょうど今、鈴木サンを誘っていたところなんです。
あっ!高野サンからも彼女に言ってもらえませんか?
“芸術作品に触れるのも勉強だからぜひ行って来なさい”って。ね?」