准教授 高野先生の恋人
彼の様子について、何かへんだな?という違和感はすぐに感じた。
けれども、それがどういう“へん”なのか、そこまではよくわからなかった。
表向きはとりあえずいつもの丁寧な彼だった。
「お話中にすみませんね。お邪魔ではありませんか?」
「とんでもないですよ。あ!その図録」
そう言って、桜庭さんは嬉しそうな顔で寛行さんが持っている本を指差した。
本は二冊あり両方とも展覧会の図録だった。
「的場先生がくれぐれも桜庭君によろしくとのことでした。
長々とお借りして申し訳なかった、と。
それから、お貸しする図録のほうは返却はいつでもいいから、と」
「すみません。なんだか高野サンにご迷惑をおかけしてしまったようで。
あー、でも嬉しいなぁ。この図録はもともと数が少なくて。
的場先生にお借りできて、本当にボクはラッキーなんです」
「それは、よかったですね」
寛行さん……???
気のせいだろうか?なんとなく私には彼の声に心がこもってないように感じられた。