准教授 高野先生の恋人
寛行さんは、まるで私を安心させるように、優しくおっとりとした口調で言った。
「詩織ちゃんは、お父さんにとって大事な大事な一人娘だからなぁ。
息子なんてさ、生きてりゃいいってくらいのもんだけど、女の子は違うもんね。
だからさ、お父さんなりに納得して認めてもらうのに、時間かかっても仕方ないよ」
「んー、なんかね、なみなみならぬものがあるみたい、よくわかんないけど」
「男親にとって娘は目に入れても痛くないほど可愛くて仕方ないって言うからね」
「寛行さん、殴られちゃうかもよ?」
「殴られて済むもんなら殴られるさ」
「まあねぇ…」
彼があまりにもさらっと言うから、一瞬スルーしちゃいそうだった。
「って、ダメじゃん!殴られるなんて」
「負けるが勝ちだよ。殴られ損にならないなら、それでかまわないと思ってるよ」
「そんなこと…」
「まあまあ。覚悟はできてるけど、本当に君のお父さんが僕を殴るとは限らないし」
寛行さんはそう言って笑ったけど、私は笑えなかった。
だって、私の為なら殴られることも厭わないなんてそんなこと……
そんな男らしいこといきなり言うから、びっくりしすぎて、感激しすぎて、
どんな顔したらいいのかわからなくて、私はとっても困ってしまったのだった。