キュランゼム
「オリバー!起きてるの?今日はあんたの…」

「誕生日でしょ?母さん。それぐらい分かってるよ」

 少年オリバーの声にびっくりしたのか、母ミザリーは手に持っていたフライ返しを落とす。それを見たオリバーは、笑みを浮かべ、グラスに注いだミルクを口に一口含む。

「なんだ起きてたのかい。今日で15歳になってなんの日か分かってるのかい?」

「勇者の家系である家は15になったら王様のとこへ行き儀式を行う。でしょ?昨日ずっとそればっか言われたら猿でも覚えるよ」

「分かってたらいいんだよ。今日は大事な日なんだからさっさと支度しな!」

 ミザリーはポンと背中を叩き、オリバーを部屋へと追いやる。

「へいへい。そもそも本当に家が勇者の家系で魔王なんていたのかな?魔物だって全然見たことないんだよ?」

「そんなのここに嫁いできた私が知るわけないでしょ。グダグダ言ってないで早く支度しなさい。そういう話ならお父さんに聞いたらいいから」

「めんどくさい事はまた父さん?しまいには父さん怒るんじゃない?」

「あの人は優しいから大丈夫よ」

「だといいけどね」

「くしゅん!めでたい日に風邪か?」

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