ぼくの 妹 姫




何も言えなくて
上靴のつま先を
じっと見つめてた



何も言えなくなったのは
宙の気持ちを
考えたからじゃなくて
自分が人を傷つけたという
事実に何も言えなくなった



謝ったって
傷が癒えるわけでもない



宙がみじめに感じるだけだ



だからといって
宙が好きだなんて
なおさら言えない



状況を悪化させるだけだ



考えれば考えるほど
自分にできる事は
何もないと
私から言葉を奪っていく



その時



―――――――ガラッ



空き教室の戸が開いて




「お前たち
こんなところで何やってる」



………お兄ちゃん



お兄ちゃんが
何食わぬ顔で入ってきて
私と宙の顔を交互に見てから



「無断で空き教室に
入るのは禁止だよ?」



宙はグッと
手を握りしめてから
ドンッと
お兄ちゃんを押し退けて
走って教室を出て行った





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