ぼくの 妹 姫
宙が出て行った方向に
しばらく視線を向けてから
お兄ちゃんは私の前に立ち
そっと髪を一筋掴んだ
掴んだ髪を
伏し目がちに見つめ
「そうか
ボクの可愛い妹に
ちょっかいかけてくれたのは
やっぱり伊東かぁ………」
やっぱりって事は
だいたい予想してたんだ
あの日
お兄ちゃんと私が
初めて身体を繋げた夜
ゴミ箱のゴムの使用者を
お兄ちゃんはもう
聞かなかった
「立ち聞きなんて
趣味悪いですね
中西先生」
お兄ちゃんのネクタイを
何気なく掴むと
「妹を虫けらから守るためさ
立派な行いだろう?」
クスクス笑いながら
お兄ちゃんは
私を抱きしめた
お兄ちゃんの腕は
私の身体をきつく締め付け
ワイシャツの胸から
顔を上げることすら出来なくて
息も苦しい
「……誰か来たらヤバいよ?」
「嫌だよ、蕾」
お兄ちゃんは
私の言葉を無視して
「嫌だよ」
お兄ちゃんの指が
スカートから出た
私の脚をなぞり
下着の中へ入っていく
「………お兄ちゃん……」
私が抵抗できないように
片腕でしっかり抱いて
お兄ちゃんは
切ない声を漏らした
「………嫌だよ、蕾
……蕾はボクだけの物だ」