ぼくの 妹 姫




女のマンションの前で
タクシーに乗り込み
自宅へ向かう



………どうせ、あの女
いつものように
飲み屋で引っ掛けた女だろう



窓から見える
街灯だけの暗い街を見てると
相変わらずの田舎街だ




目を閉じると



「お兄ちゃん
蕾のネクタイやって」




可愛い少女が
まぶたに浮かぶ




妹と別れて10年



ぼくは35歳になり
7年前に従姉妹の美紗と結婚し
5歳の息子 大樹(ダイキ)がいる




美紗に落ち度はないし
大樹だって
可愛くない訳じゃない



だけど『家庭』



そこは
ぼくを柔らかく締め付け
窒息するような気持ちになる



柔らかく 確実に
ギリリと ぼくを絞め
堪らず こうやって
他の女の元へ
足を運んでしまう




性根が腐ってるんだ、ぼくは





タクシーが赤信号で
ゆっくり停まる




赤い光をぼんやり見つめ
夢の中の蕾を思い出す



ぼくの中の蕾は
いつまでも中学生だけど



実際の蕾はもう25歳だ




当たり前だけど
あれから一度も会ってない




……夢の中の
蕾を思い出すだけで
ぼくは今でも
心を濡らし欲情する――――






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