ぼくの 妹 姫
「お前ってさぁ…………」
私が男子生徒を半殺しにしたと
噂が一気に流れてからは
より一層、誰も私に話しかけないのに
隣の席の伊東くん
たまたま あの時
廊下を通りかかり
私を抑えた伊東くんは
「お前ってさぁ…見かけによらず
なかなかヤるな」
授業中、そんな事を言って来て
「中西 蕾は春の嵐だな」
伊東くんは頬杖ついて
机の上の古文の教科書に視線を落とした
ペンギンみたいな頭に
鋭い目付きで
私の事、春の嵐って
ポエマーみたいな事を言うから
思わず 吹き出しそうになった
両手で口元を押さえた私を
横目で チラッと見て
「オレ、伊東 宙(イトウ チュウ)
宙でいいよ」
改めて 自己紹介をしてきた
だから
「中西 蕾です。よろしく」
と 言うと
宙は 顔をくしゃくしゃにして
「知ってるし」と笑った