ぼくの 妹 姫



宙は 生まれて初めての
友達だった



「蕾!宿題見せて」と


毎朝 大きな声で私に言って



そんな宙の笑顔が



私は嫌じゃなかった




放課後


カバンを持って教室を出ようとした私に


「蕾」



宙が かけ寄って



「今日、用事ある?」



「別に」



「じゃ、買い物 付き合ってくんねぇかな?」



「買い物?」



私が首を傾げると



宙は少し恥ずかしそうに


「ダメ?」って訊いた



「いいよ。付き合ってあげる」



二人 並んで 廊下を歩くと


向こうから
お兄ちゃんが歩いて来た



隣の宙は少し表情を固くして


私は床をじっと見つめて歩いた



すれ違いざま


「さようなら」と


お兄ちゃんは他の生徒に声をかけるのと

同じトーンで言って


その声は


お兄ちゃんではなく


『中西先生』の声だと思った



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