ぼくの 妹 姫
お兄ちゃんの背中に
「眠れないの?」
そう問いかけたら
振り返らずに
「蕾こそ」
掠れたお兄ちゃんの声
そういえば、私が家を抜け出した時
一度だって私の気配を見落とさなかった
お兄ちゃん
いつも眠れないの?
心配で じっとお兄ちゃんの背中を見つめると
「もう寝なさい」
前髪を片手でかきあげたお兄ちゃんの横顔が
すごく哀しげに見えて
「お兄ちゃんが寝たら寝る」
「………フッ」
力を抜いたように笑って
「寝るから。
ほら部屋に戻りなさい」
「ねぇ。お兄ちゃん」
「うん?」
「一緒に寝る?」
「……………え?」
「一緒に寝ようよ。お兄ちゃん」