空の果て星の息吹
『朱鷺なら大丈夫だよ、ここの技術は優秀だから、だから大丈夫だよ』


『月夜野さん、、僕はあなたに言わなければいけない事がある・・・これを言わなければ僕は重力に捕われて宇宙へは行けない気がするから・・』


ユイは不思議そうな顔をしながら僕を見た。


時間が止まるように感じる、言いたい言葉が中々出ない。


『月夜野さん・・・』






『今更だけど―――』








『好きです――』


『例え、あなたに初恋の好きな人が居ても、僕はあなたが好きだから』


『僕らの出会いは遅くて、あなたの心にはその初恋の相手が居て・・・周回遅れのランナーの様にどれくらいペースを早めても僕には絶対に追い越せないかもしれないけど・・・』


そこまで言うと、ユイは僕に抱きついた。


温かい感触と、長い黒髪が月の光に照らされて輝いて見えた。


心臓の音がまるで、突き抜けて行きそうなほど早く鼓動するのを感じる。


『尊敬するアインシュタイン博士が相対性理論で宇宙の様々な症状や現象を科学的法則で答えを導いた様に、その答えはもう決まっているかもしれない、でも、ユイと一緒に夢を追い掛けたい・・』


言葉より大切な事――それは、温かさなのかもしれない、ユイの温かさに心が包み込まれる。


ユイは顔を僕の胸に埋めていた・・でも泣いているのがわかった。


涙が交じる声でユイは答えた。


『遠野くん・・周回遅れのランナーだって、走っていたら、もしかしたら、信じられない奇跡が続いてトップに躍り出るかもしれないから・・・』


さらにユイは続けた。


『相対性理論だって万能では無いよ・・・だって、私の言いたい答えを、当てることは出来ないから・・・答えは、今は言わない、戻ってくるまでお預け・・』

『それはあなたが、遠野ソラが無事に私の所へ帰ってくるまで言わない、これは約束だから』


『竪琴座の神話、オルフェイスと冥界神ハデスとの約束の様に、私はその答えを言わない』


『だから、、不安なことを言わないで、帰ってきてね・・・ソラくん』 

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