空の果て星の息吹

時の流れと空の色

この時期は高等部から大学部の進学の関係で、妙な緊張感が漂っている。


この学園は将来がはっきりとしているから、目標はあらかた決まっている。


もちろん学べる学部は定員が決まっている。
エスカレーター式の学校ではあるが、学部選択試験があるので、人気の学部は倍率が高いのだ。


結局、受験の成績で将来が左右されるのはどこも同じだった。


僕は宇宙船の材質研究や機体開発の分野に進みたかったが、そこは人気があり倍率が高い狭き門であった。


僕は充電式のスクーターにまたがり、澄んだ青空を見ながら学園に迎う。


佐渡は学園都市と名前はついてはいるが、学園部と学生寮、それに併設するシャトル発射場や研究施設群以外はのどかな田園風景が広がるのだ。


最新式の科学技術の集まる場所なのに、たまに信じられなくなる時を感じる。


通学のバイクがこの時間帯になるとかなり多くなる。

遠くに見えるロケットの発射台からは実際に技術者が何名か宇宙へ飛んでいるのだ。


田園風景とミスマッチな建造物を見ながらやがて乳白色で統一した学園が見えてきた。


『遠野―――っ!』 


後方から見慣れた声が聞こえた。


スクーターの速度を緩めなると、学園入学時に席が近くで、それから腐れ縁の手塚晋一(てづかしんいち)がスクーターで追い付いて、肩を叩いた。


『シン、相変わらず朝から元気な奴だな』


冗談混じりに言いながら、昨日のサッカーの試合の素晴らしさを、一方的に語られながらいつもの通りに学校へ向かった。





< 5 / 216 >

この作品をシェア

pagetop