ユピテルの神話
○プロローグ○

○プロローグ○


――サァ…

風が通り、視界で揺れるのは青々と生い茂る木々。
木々からは緑色の優しい光が茶色の地面へと降り注ぐのです。

ここは深い森の中…。

静けさの中で耳を澄ませてみますと、葉の擦れるざわめき。
小さく微かに、時に大きく。

姿を隠した小さな虫たちの奏でる音色が心地よく、溜め息が漏れ出します。

緑色が混じり合いながら白く霞む霧の向こうでは、木々の合間から暗い空が覗いていました。
紺色の空には、白い惑星が輝いています。


アレハ…、僕ノ心。

ココハ…
僕ガ愛シタ世界。


深い森の中心には、長きに渡りこの森を守る大きな樹が一本あります。
自ら意思を持った、森の番人である樹の精霊です。

地中に深く深く根を張り動けない彼の元には、風たちが情報を運び、人々もまた度々に足を運ぶのです。


今日もまた…

彼の根元には、
一人の妖精の女の子と、黒い犬竜の子が訪れていました。


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