ユピテルの神話


僕は、
「永遠」を失いました。


僕が皆と同じ様に「時」を進めなかったのは、

僕が、僕で在った為。


時間も空間をも越える存在。
「運命を紡ぐ者」
であったが故なのです。

例え、
記憶を消しても、その存在の証しを持っていたのです。


金色の、懐中時計――

胸の奥深くに在った時計。
後継者である彼の手に渡り、僕はその資格を失った。

永遠を、失ったのです。


僕は「あの世界」の住民。

この世界で、このままエマと共に穏やかに年を取れるわけではありません。


ラディスの名を継ぐ者。
彼は言っていました。


『…分かった。それも運命か…。記憶を戻そう。この街は、もうお前の前には現れない。残りの人生、達者で暮らせよ。じゃあな、先輩…。』

その意味が、
この時なら分かりました。


僕に残された時間は、
とてもとても短いのです。


消えてしまう。


それは明日かもしれないし、
明後日かもしれません。



彼は、運命を正す者。

記憶を失った僕が、
この世界に与えた全ての行為が、運命の歯車の一つ。


そして。
これから行うだろう事も、

運命の、輪の中…



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