ユピテルの神話


「…私に、弟が居たでしょう?」

――えぇ…――


「彼は村で、私はこの山で離れて暮らしているのだけど。私を心配して、よく会いに来てくれるの。色々話してくれるわ。弟ね、昔からユラに憧れていたのよ?」

――…僕に?――


「…それでね、弟はユラを崇める教会なんて作ってしまったのよ?七色に輝く、硝子細工の綺麗な建物なんですって。自分を牧師だなんて言うの…。ふふ、笑ってしまったわ。」


――…七色の硝子細工の、教会…?牧師…?――


「…それにね?親を亡くした子を引き取って、一緒に暮らしているんですって。その子に名前を付けたのだけど…。ふふ…、何て付けたと思う?」


――…あぁ、そうですか…。あぁ、やっぱり彼でしたか…――


僕は…、
知っていたんです。


「……ユピテル。ユラの様に立派になる様にって。」


――…ユピテル・マーシュ。…いつかの、僕。僕の名前…――


僕を育ててくれた牧師の姉は、遠くの山で一人暮らしていると…。
それは月を、こよなく愛しているからだと。


…どうして、
気付かなかったのでしょう。

遠い昔の、
ラディスの名を継ぐ前の僕の愛称は、「ユマ」。


『ユピテル・マーシュ』


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