七罪巡り
「遅い、待たせんなよ」
「悪い…由紗さんに捕まってたんだよ」
「ゆ…、ああ、あいつか」
「タキ、ユサさんってだれ?」
玄関に行けば着替えを終えたタキと、タキから連絡が入ったのであろうホシの姿があった。
素直に彼女の名前を出せば、タキも納得。普段ならこれでいいところだが今日は違う、俺は彼女が何者なのかが知りたい。
ちょうどいいことにホシのの学習機能が作動して、『由紗』という人名を知らない言葉と判断したらしい。
「由・紗・は・由・紗・だ」
「それじゃわからないんじゃないか?」
「んなこと分かってんだよバーカ。どーせお前も知りたいんだろーが」
「ねえタキ?」
「うっせえ分かった教えりゃいいんだろ、ユサは昔の仲間」
「…わかった!」
昔の仲間。ホシもそれで納得してしまった以上もう聞き出すのは難しいだろうから、一応それだけにしておこう。
やっとタキの過去を知っていそうな人を知ることができただけでも収穫だ。
由紗という人物も、タキなみに危険かもしれない。あんなにきれいな顔をして。あんなにスレンダーなのにどこかセクシーな体で。
「もしかして、由紗さんとそういう「ちげーよ絶対何があってもそれはねぇ、お前ありえねー!」
俺がそんなふうに、タキが由紗さんと恋愛もしくは肉体関係をもっていたんじゃないかと考えることを、タキは感づいていたらしい。
素早く袖から刃の部分だけ出したメスを首にあてがわれて固まる。
「次それ言ったら殺す」
「すみませんでした」
即答で謝るとタキは俺を睨みながら舌打ちをしてメスを戻した。中でどうなっているのかは『企業秘密だから無理』ということでわからないままだが、むしろ知りたくもない気がする。
「よし、行こうぜ」
「感染者情報は必要か?」
「当然。」
メモは数秒確認されて手のひらの中で握り潰された。
タキはゴミと化したメモを握った手ごと俺のスラックスのポケットに侵入して、中身だけ置いていった。
「カワイソーな感染者サン、早くこの世にバイバイさせてやんねーと」
歩き出したタキ、ホシについて裏道へと進んだ。
(バイバイ、だなんてな)