〜花魁〜



建物の下で雨宿りをする人や、ひとつの傘に肩を寄り添わせながら歩く恋人や色んな人で溢れかえっている窓の外を眺めながら…
フーフーと息をかけ、湯気のたつ熱いコーヒーを呑気に口へ運ぶ。


空は、さっきよりも暗くなり
夕焼けから夜へと姿を変えて行く



『はぁー…』



これで何度目のタメ息だろう?
俺の口からは、タメ息と煙草の煙しか出て来ない。




目の前を通り過ぎてゆく恋人が羨ましい。
幸せそうに手を繋ぐ、親子ですら妬(ねた)ましい。



歪みきった心は、なかなか晴れてくれなくて
そんな自分自身に、一番腹が立つ…。




ブーッブーッ




スーツのポケットに入れてある携帯が、これでもかって位に着信の存在を伝えて来る。



━着信*横田 秀樹━



横田 秀樹とは、会社の先輩で

年は…俺より4つ上かな?確か。



そんな人が、俺に何の用やろ?って疑問に思ったけど
着信に気付いていて、無視をするなんて事は出来ないから…仕方なく通話ボタンを押した。



ピッ……




『もしもし…?』


「もっしもーし?坂本?お疲れさん!!今どこ〜?」



この、横田と言う男は…貴史と同じ様な雰囲気。

簡単に言うならば…“うるさい”








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