She and I・・・

★11★ ~宇宙からのメール

To:チナツ
From:イタル
Sub:


バイクのエンジンをたまにかけてくれるようにと
友達に頼んで来たけど、
彼は忘れずにやってくれているだろうか。

時々そんなことを考える。

いつも千夏のことを考えているのではなかったのか、
と怒らないでくれよ。

同じことなんだ。

千夏とバイクの思い出は、
僕の中では繋がっているんだから。

都会の生活では必要ないだろうと、
僕は故郷で乗っていたバイクを処分していた。

大学生活は汲々としていたが、その処分したお金を元手に新しいバイクを手に入れた。

夏休みの初めの大宮家訪問で

君の家庭教師になることが決まり、

きっとこれからは必要になると
思ったからだ。

最初の頃は電車で通っていた君の家に、
初めてバイクで行ったことを覚えてる?

君は眼をまるくして驚いていたよ。

きっと君の周りにはバイクに乗る人がいなかったのだろうね。

僕は幼い頃から、操縦するものが好きだったから、
すぐに免許をとったけど。

でも、本当は君のお兄さんも免許は持ってるよ。

「おやじには内緒で免許だけはとったんだ」

と言って免許証を見せてくれたことがある。

そんな家に育った君が、

乗せてくれと

せがんだって、僕は「うん」とは言えないだろう?

それでも君は、

「じゃあ、受験が無事に終わったら後ろに乗せて、どこかに連れて行ってよ」

と言う。

僕にとっても魅力的な提案に思えた。

「志望校に合格したらね」という条件はつけさせてもらった。

「約束だよ」
と言って微笑んだ君の顔を、
僕は一生忘れないと思った。



それからは、
君の家の裏道に着くと、

君が木戸を開けてくれて、

庭にバイクを停めた。

いつしか、

勉強を始める前に庭のベンチで、

話をするのが習慣になっていったね。

色んな話をしたなあ・・・・
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