She and I・・・
★18★ ~星・約束
春と言うにはまだ肌寒い日の続く頃、
彼女は無事志望校--僕の通う大学--に合格した。
僕の家庭教師の力というよりは、
彼女の学力が充分に高かったからだ。
それでも、大宮家の人々は非常に感謝してくれた。
彼女を囲んだ家族だけの合格パーティーにも招待された。
一方で僕のかかわったロボットアームの開発は順調に進み、その件で大宮家に行くことは少なくなっていた。
受験前に集中的に通った大宮家には、それ以来の久しぶりの訪問だった。
チャイムを鳴らす前に彼女が玄関から飛び出るように現れた。
「いらっしゃいませ」と彼女は言いながら、僕を上から下まで眺めた。
「おかしい?」
スーツとまではいかないが、着慣れないジャケットで一応のこぎれいな格好をしてきたつもりだった。
「全然おかしくないよ。でも、普段の格好で良かったのに」
「お祝いだからね。はいお土産」
といいながら買ってきたケーキを手渡した。
「ありがとう。オートバイじゃないのはこの為?」
「それも、ある」
「わかった。飲むつもりだ」
「大宮先輩からも電車で来るように言われた」
「兄さんが?さては私のお祝いというのは言い訳で、もとから二人で飲む気だったな」
「そんなことないよ」
などと話していると、奥から彼女の母親の声がした。
「そんなところで話していないで、はやくあがっていただきなさーい」
はーいと彼女は言い、
少し顔を寄せて僕だけに聞こえる声で、
「約束は忘れてないよね?」
と言った。
「約束?」
と言うと彼女はふくれた顔をして、すたすたと先にあがってしまった。