さよならの十秒前
「…坂井さんですか?」

私がかすれた声で言うと、先生は驚いた。

「…よくわかったな」

でも、間に合わなかったのだ。

私は震えそうになる手をぎゅっと握りしめ、うつむいた。

「…先生」

「なんだ?」

先生は私の横に腰掛けた。

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